「冬原さん? なぜそうなるんだ?」
伊月さんの眉間にしわが寄る。こんなときまで隠さなくても良いのに。
「付き合っていたんでしょう? 彼女と」
「は……?」
「私、あのとき聞いていたんです」
伊月さんは頭を抱えて盛大にため息を吐いた。聞かれているとは思わなかったんだろう。
私はここでたたみかけることにした。
「伊月さん、どうか冬原さんと幸せになってください。私、自分で階段から落ちたと言いますから」
「……」
「私への復讐で、幸せになるのを止めないで」
「彼女とは何もない」
「伊月さん……」
仇の娘にどうしてここまで気遣ってくれるんだろう。優しいにもほどがあり過ぎる。
「ああ、その……俺たちは最初から話し合うべきだったな」
疲れ切った様子の伊月さんは、遠い目をして私の布団をかけ直してくれた。それにお礼を言うと、彼はどこかスッキリした顔で「どういたしまして」と返した。



