騙すなら墓場まで




  今日は人生最良の日!

 私はウエディングドレスに身を包み、伊月さんと永遠を誓う瞬間を夢見ていた。彼に甘い声で「美節(みせつ)さん」と呼ばれ、指輪の交換をし、キスを交わす。

 それがあと数分後には叶う。


「お母さん、私……幸せになれたよ」


 お父さんから「お母さんによく似ている」と言われた笑顔で独りごちる。鏡の中の私は少し面長の顔に奥二重の瞳、細くて小さめの鼻に、薄くても血色の良い唇をしていた。

 柔らかい日差しが降り注ぐ春の日は、このプライベートルームにも祝福を授けてくれた。小鳥の声と、木の葉がそよぐ音。世界中が私たちの幸せを願ってくれているのだと、ファンタジックな妄想が膨らんだ。


「私ね……これからも伊月(いづき)さんとの一日を大事に過ごすから、見守っていてね」


 身体が丈夫じゃなかったお母さんは、私が五歳のときに亡くなった。