なんで泣いてるの…?
八雲さんの切れ長の瞳からポロポロと流れる涙。
さっきはこれが目に入ったのか。
いつも八雲さんがやってくれてるように、涙を拭うため重たい手を持ち上げた。
でもその手は八雲さんに取られ、八雲さん自ら頬を刷り寄せてきてくれた。
暖かい。
体温も、涙も。
「ハイネ…」
あ…。
あたしの手…。
埃まみれだ。
汚い。
「八雲さ…離し……」
「…やっと…ハイネに触れれた」
「……っっ!!」
離して。
そう言おうとした。
でも八雲さんは離すどころか、痛くないように少しだけ力を込めてきた。
涙を流したまま柔らかく微笑んで、そんなことまで言ってくれるから。
「ふっうっあっ…」
限界だった。
溢れだした涙で八雲さんが見えない。
「あああああああーー!!」
「…ハイネ」
「やぐっっやぐもざっ…あああああああーー!!!!」
泣き叫ぶ。
「怖かったな。痛かったな。ごめんな。ごめん。守れなくてごめんっ」
いまだに血が流れるあたしの太ももを押さえながら、片手で深く抱きしめてくれる。
「病院連れてくからな」
「ひっぐ。や…ぐもざんも??」
「ああ。もう離れねぇ…」
「ふっひっ…うっぐ。うん!!うん!!」
「ふざっけんな!!殺す気か!!こんなこと赦され…」
『うるせぇ』
「ぎゃあっ!?」
逃げていた男が戻って来たらしい。
だけど、ガターーンッッと何かがぶつかる音と男の悲鳴が重なった。
『やっと会えた二人の邪魔すんじゃねぇよ。殺すぞ』
声がした。
ゾッとするほど怒りに満ちた冷たい声。
「……けー?」



![少女と過保護ーズ!![完]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.797/img/common/cover/sig0andblekg007.png)