深瀬くんが甘すぎる



「あのとき、このまま服のデザインなんてやってていいのか、さっさと家業を継いだ方がいいんじゃないかって迷ってて。精神的にも結構キツくてさ、そんな時にあの感想を読んで…結構、救われた。こんなに真っ直ぐ自分の作品をみてくれる人がいるって思えたから、それからも自分を曲げずに済んだ」

意外だった。

いつだって我が道をいってて、自信に溢れているような深瀬くんにもそんなふうに思うことがあったなんて。

「それで、その時から気になってた。…これで納得してくれる?」

こくりと頷くと、「こんなダサい話する気じゃなかったのになぁ」と深瀬くんが頭をかいた。

「私は教えてくれて嬉しかったけど」
「そりゃ良かった」

照れ隠しなのかぶっきらぼうな口調だ。
それから数秒の沈黙があって、先に深瀬くんが口を開いた。

「それで、嫌?…逃げるなら今だけど」


「嫌、…じゃ、ないです」


「言質、とったから。覚悟してて」

そう宣言した深瀬くんは、いたずら好きの少年みたいに笑った。

呉服屋さんでみたのとは違って、年相応の青年らしいくしゃりとした笑顔に、胸が高鳴る。


「絶対、好きにさせてみせるよ」



…もうすでに、だいぶ深瀬くんにときめいてしまっているのは、まだ内緒。