「…深瀬 伊織。よろしく」 隣の席から低く落ち着いた声がして、思わず視線を戻す。 隣の席を見れば、深瀬くんはうつむきぎみでスマホの画面を見ていて、その表情は髪に隠れて見えないし、彼がこっちに視線を向けることもなかった。 それでも確かに聞こえた返事に、わたしの中での深瀬くんの印象がちょっと変わる。 もしかしたら、深瀬くんは思ったよりは怖くない人なのかもしれない。