恥ずかしくて、必死で弁解しようとすると、長瀬が小さく笑う。

「うん、お腹が鳴るのはとてもいい事だと思うよ。⋯⋯あの、もし良かったらこれから家こない？」

⋯⋯え？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＋ ＋ ＋

「まことお兄ちゃんの妹の、長瀬栞菜(かんな)です！」

「栞菜の双子の兄の奏多(かなた)です」

「この二人は僕の妹と弟だよ。小四の双子なんだ」

「そ、そうなんだ……」

なんでこうなったんだろう⋯⋯と思いつつ、目の前に並んでいるご飯が目に入ってまたお腹がなりそうになるのを必死に我慢する。

あのまま流れで長瀬に連れてこられたけど、本当に私はここにいてもいいんだろうか⋯⋯。

「あの、長瀬⋯⋯私、ほんとにここにいて迷惑じゃない？ご両親とか、帰ってくるんじゃない？」

「そのことなら大丈夫だよ。うちの親、共働きで全然帰ってこないから家のことはだいたい僕がやってるんだ」

追加でさらに唐揚げが乗ったお皿を持って戻ってきながらそう言う長瀬。

そ、それならいい、のか⋯⋯？

まだなんとなくもやもやが残ったままだったけど、目の前の料理が美味しそうすぎて今から帰る、という選択肢が私の中から消え去った。

長瀬の言葉に甘えて早速唐揚げを口に運ぶ。

あ、美味しい⋯⋯。

「いや〜、まさかまことお兄ちゃんが女の子連れて来るとは思わなかったな〜。しかもめっちゃかわいい」

「え〜、栞菜ちゃんってば嬉しいこと言ってくれるじゃん！栞菜ちゃんもかわいいよ！」

と言った私の言葉は全くお世辞ではなくて、栞菜ちゃんは本当にかわいい。

くりっとした大きな二重の目に、私の手のサイズより小さいんじゃないかと思うくらい小さな顔。

セミロングの黒髪は、両サイドで編み込みがされていて、とても似合っている。

「髪の毛かわいいね！自分でしてるの？」

「ううん、まことお兄ちゃんがしてくれるんだよ！お兄ちゃん、とっても器用なんだ！」

「えっ、長瀬が！？」

驚いて長瀬の方を振り返ると、長瀬は驚いのか食べていた唐揚げを喉につまらせて咳き込んでいた。

「か、栞菜っ、余計なこと言わないでいいから！」

「え〜？余計なことじゃなくない？あ、そうだ、ここなちゃんもお兄ちゃんに髪くくってもらったら？」