「私の……望み?」



「リリー、ひとつだけ魔法を教えてあげよう」
「教えてもらったって使えない」
「そう言わずに、簡単な魔法だから、練習してごらん」

どこからともなく、ノア様は石を取り出した。
うっすら紫色。


「アメジストの原石さ。これをあげよう」
「私に?」
「ああ。これは、君のイメージ通りの形にすることができる。例えば、こんな風に」

ノア様が握り締めて、また手を開くと。
石ころが、バラの形に変わった。


「わあ……!」
「心の中でイメージしてごらん。
そして命令するんだ。『変われ』って」
「呪文は?」
「そんなものはいらない。本当の魔法に長い呪文はいらないのさ。
ただ、命令するだけでいい。さ、やってごらん」