へなちょこリリーの惚れ薬


「でも……嬉しいよリリー」
「……ノア様」
「私は、もう、この城で一人きりだとずっと思っていた」

ローズと会えなくなって、誰もこの城を訪れなくなって、森を守る意識としてだけ、存在しするようになって、100年が経った。

この城は、黒百合の力を借りて維持している。
結界が破られないように、敵が侵入してこれないように。

ローズを守りたかった。
しかし、彼女といられたはずの時間を失った。

「ノア様は幽霊なのよね? どうして、私たちは……触れられるのかしら?」
「それは、リリー、君が望んだからだよ」

城の前で、リリーが「誰かいませんか?」と言うから、姿を見せた。
透明なままでは、気付かないだろうから、形を作った。

「黒百合の女神の姿に近いと思えばいい。彼女は精霊だから、実体があっても、血や涙が流れことはない」



神や精霊に近づいた存在。

……やっぱり、私は、ノア様とはいられないのね。

「ところで……。ねえリリー。ローズは幸せに暮らしているんだよね?」
「ええ。おばあちゃんは幸せよ。だって、育ててもらった私が幸せなんだから」

そんな風に思える日が来るなんて、思ってもいなかった。
私はいつも淋しかった。
でも、おばあちゃんはいつもそばにいてくれた。


「……」


私には、おばあちゃんがいた。
トレニアがいた。

でも、おばあちゃんには?