一方、リリーの家では、ローズが孫がいないことに気付いていた。
リリーなら出掛けたわよ、と私は答えた。

「こんな時間にかい?」
「ノアのところに行ったわ」
「……!」

どうして止めなかった、と言いかけて、ローズは黙り込んだ。

紅茶でも飲みましょうか、と私は言ってソファに腰かけた。

「……どうしてリリーには会えた? あの人が見えた?」
「……さあねえ」
「教えておくれ黒百合」
「珍しく素直じゃない」

いつも素直ならいいのに。
運んできた紅茶に手をかざす。

小さなティーカップの中に、リリーとノアの姿が映し出された。