「おばあちゃんを置いていけないよ。私は、ローズ・ロックの孫です」

ノア様は、差し出した手を下ろした。
彼は驚いた様子もなく、呟いた。
君は、やっぱりローズの孫だったのか、と。

「気付いていたんでしょ?」
「……ああ。そっくりだからね」

忘れていたと思っていたよ、ノア様は笑った。

「同じ惚れ薬を飲ませられるとはね」

少し話さないか、とノア様は私の手を取った。
その手は、とても白くて柔らかくて。
月の光が、結晶になって、人になったみたい。

きっと、昔。おばあちゃんも同じように思ったんだろう。