中には、素直に降伏に応じない城もあった。
しかし、放っておいても水は城を浸食していく。

水に浮かぶ敵の城は、まるで箱舟。
死の国へ運ぶ舟だと、ノアの名は恐怖とともに語られるようになった。

「なかには最後まで抵抗して、死体で埋まった町もあったみたいよ。人間、素直が一番ね」


強情な敵には、ローズが魔法を使って敵軍を眠らせた。
たいていの領主はこれで降伏したが、降伏しない相手には強硬手段に出た。

「霧の中に街を包み込んだり地震を起こしたりね」
「そんなことまでできるの」
「あのねえ女神をなんだと思ってるわけ。この国をすべて土に戻すくらいのことはできるのよ」


ラウネルは、それぞれの領主が争い、その隙に他国が侵略してきてということが続き、誰も統一を成し遂げられてこなかった。

それを、ノアとローズは一年でやってのけた。

「あんたが会いに行くのはこういう男だけど。それでもいいの?」