この人、歩くの速い!
暗くなった森の中を、ずんずんと進む。
「ああ、少し早かったね」
そう言って、その人は私の手をつないでくれた。
「綺麗な赤毛だ。リボンより花を飾ったほうが素敵だよ」
「あ、えっ……、ありがとうございます」
そんなこと言われたの、初めて。
細くてひんやりした指で、私の耳に花を飾ってくれた。
「私はリリー、リリー・ロックといいます。お名前を伺ってもいいですか?」
「ノアだ。ラウネルの人間で私の名を知らない者がいたとはね」
笑う時、口元に手をもっていく人なんだな……。
余裕があるっていうか。
(かっこいい、なー……)
村の近くまで来ると、その人は
「今度は迷子にならないようにね」
と言って、帰っていった。