玉響の一花    三

「こんなとこでこんなことして
 誰かに見られたらっ‥」


『フッ‥‥構わない。』


えっ?
構わないって‥‥どうして‥‥


抱き締める腕の力がほんの少し
強くなり、背中に回された腕が
まるで逃がさないようにと絡みつく


『俺は会社に一歩でも入れば
 個人的な私情よりも企業の為に
 働く一社員になる。お前のことも、
 一社員として必要以上には
 接するつもりは今後もない。
 でも‥今は違うだろ?
 今は就業中でもなければ、俺と
 お前は普通のただの恋人だ。
 休みの日に誰と過ごしたかで
 何か言われるならバレたって俺は
 構わないと思ってる。』


いつもそんなに多くは話さない筒井さん
が、ゆっくりと伝わるようにちゃんと
私に話してくれている‥‥


大丈夫‥‥心配するなって‥‥
言い聞かせるように丁寧に‥‥


「筒井さんは‥‥すごく皆さんに
 モテる方だから心配なんです。」


『フッ‥‥そうなのか?』


そうなのか?って‥‥‥
食堂に来ただけでも女子社員が
ザワザワして見てるのを知ってる
くせに‥‥‥


『そうだとしても、何も悪いことを
 していないし、誰にも迷惑をかけて
 ないから堂々としてろ。
 俺は好きな女に背を向けさせるより、
 隣にいて欲しいからな。』


「はい‥‥滉一さん。
 探させてしまってすみません。」


腕の中があまりにも温かくて、
この腕の中にいたら大丈夫だって
一瞬で思わせてくれる。


私も守られてるだけじゃなくて、
こんな風に包み込める人になりたい‥


『さ、行くぞ。
 買い忘れがないように、色々見よう』


「はい!」


差し出された手に自分の手を絡めると
優しい笑顔が向けられ少しだけ
恥ずかしくなったけど、さっきまでが
嘘みたいに、それからはまわりが
全く気にならなかった。



『お前‥荷物が多いから、なるべく
 コンパクトにしろよ?ただでさえ
 冬服は嵩張るから圧縮袋は必須
 になりそうだな。』


旅行用の化粧品を入れる容器や、
圧縮袋などのオススメを筒井さんに
選んでもらい、冬用の服もお互い
沢山購入した。


パリの気温は日本よりかなり低く、
中が温かいブーツや、スヌードなど
久しぶりに爆買いと言われるほど
買った気がする


「あっ‥‥ここも見ていいですか?」


オーガニックコットン専門のショップを
見つけると、前から欲しかった
ルームウェアを最後に見たかったのだ