玉響の一花    三

私と向き合うと決めた時点で、
筒井さんは覚悟を決めてるって
亮さんが言ってたから、それからは
あまり気にし過ぎないようには
してる。


「‥‥‥」


それにしても、今日の筒井さん‥‥
歩いてる人に見られすぎな気がする‥


シンプルな白いコットンシャツに
普段はなかなか履かないスニーカーと
いつもよりスポーティな格好だけど、
元々のスタイルの良さと整った
容姿のせいで目立ってしまっている



「すみません‥お手洗いに
 行って来ていいですか?」


『分かった。そこで待ってる。』


変なプレッシャーと落ち着く為に
一旦お手洗いに行く事にし、緊張で
手が冷たくなっている事に気づいたのは
手洗い場のお湯に触れた時だった


急いで筒井さんの待つ場所に行き
辺りを見渡すと、すぐに
見つけたものの、3人ほどの女性に
囲まれているのを見つけて固まる


どうしよう‥‥
なんか楽しそうに話してるし、
もしかして知り合いとか社内の人?


それだったら行かない方がいい気が
するから、とりあえずメールしよう‥


その場を離れて歩きながら良さそうな
ショップを見つけると、そこにいる事
をメールして暫く1人で雑貨を
見ることにしたらすぐに電話が
かかって来た。



「‥‥もしもし。」


『(お前‥そこから動くなよ?)』


ビクッ


少しだけ低めの声に、聞こえるか
聞こえないか分からないくらいの
返事をすると通話が切れてしまった


筒井さん‥‥怒ってる‥‥
やっぱりあの時勇気を出して
声をかけたら良かったのかな‥‥


ううん‥‥悩んでても仕方ない。
とりあえず謝ろう‥‥。


店から出るとすぐに人混みの中に
筒井さんを見つけ、自分から側に
駆け寄った。



「筒井さん‥‥あの私‥‥」


『ここだと店の邪魔になる。
 向こうに移動するぞ。』


怒ってる声とは裏腹に繋がれた
手は痛くなく、指を絡められると
いつも通りの優しさが伝わり、
その後ろ姿にさえ泣きそうになった


暫く歩き、階段の踊り場のような
場所に来ると、ようやく立ち止まり
私をその場で優しく抱きしめてくれた


『悪い‥‥お前が出て来た時に
 気がついていたのに、旅行か何かで
 来てた人に駅に行く道を聞かれて
 断れなかった‥‥
 お前のことだから社内の人とでも
 勘違いして去ったのだろう?』


筒井さん‥‥