玉響の一花    三

『もう!大丈夫だって!』


『うん、でも大事だからさ。
 すみません、大切な食事会を
 邪魔してしまい‥‥もし良ければ
 我が家に是非いらしてください。』


穏やかな話し方はやはり歳上の
余裕さも感じられ、パワフルな真衣とは
正反対のタイプだけど、すごく
素敵だなって思えた。


「気をつけて帰ってね?
 葩もまたね。」

『うん、霞もフランス気をつけて
 行ってらっしゃい。』


3人をカフェの前で見送ると、
筒井さんにランチが終わったことを
メールして、少し待つことにした。


いいなぁ‥‥結婚か‥‥


大学を卒業して、社会に出て3年目で
余裕もなく生きて来たけど、その中で
筒井さんという素敵な人に会えた


私の人生にはまだ考えられないけど、
幸せそうな真衣を見て、私もいつか
大切な人とそうなれたらいいなと
少しばかり願ってしまう


その相手は筒井さんしか考えられない
けれど、未来だけは誰にもわからない。


一度別れを経験してしまったことで、
こういう事がもしかしたらもう一度
起こり得るかも知れないって思うのは、
片思いではなく楽しくて幸せな
時間を沢山得てしまったから。


そんなことを考えていたら筒井さんにも
失礼だけど、頭の片隅に覚悟として
置いて、今を精一杯生きたい



『霞』


ドクン


目の前にハザードをたいて停車した
筒井さんの車を見つけて駆け寄ると、
中からドアを開けてくれてすぐに
乗りこんだ。


「ありがとうございます。
 早かったですね。」


シートベルトをしてから、運転席の
筒井さんを見つめると、サングラス
をしてるだけなのに素敵過ぎて
自然と顔が熱くなってしまう


真衣の恋人は15歳も年上なのに、
話し方がとても自然だったけど、
私は顔を見るだけでまだこの有様だ


敬語を辞めないか?と言われたけど、
そんな日はいつか来るのかな‥‥


『フッ‥‥見過ぎだ。』


「ッ!!」


人差し指を曲げてコツンとオデコに
触れた手の向こうで口角が少し上がり
笑った筒井さんにまた体温が上昇する


もういいや‥‥
私は真衣みたいにはなれないかも
知れないけど、この先もこの気持ちを
ずっと感じていたいから


昼間に2人でこうして出掛けた時に
社内の人に会ったらどうしよう?と
思うけど、筒井さんは社内の人間と
休みの日に会うことは悪いことじゃ
ないから堂々としてればいいと
言っていた。