玉響の一花    三

2人で地下駐車場まで行くと、
当たり前のようにドアを開けてくれた
筒井さんに頭を下げて乗り込んだ。


『せっかくだから、何か美味しい
 ものでも食べていこう。
 まずはお前が第一歩を踏み出せて
 良かったな‥‥。』


「はい‥‥お家に帰ったら
 思いっきり泣きます‥‥。」


『フッ‥‥じゃあ俺はそんなお前を
 思い切り抱き締めるとするか‥』


筒井さん‥‥‥


本当は今すぐにでも抱きつきたい衝動に
かられていたけど、優しい表情で頭を
撫でてくれたので私も笑顔を返した


「あの‥‥今日はエレベーターで
 ありがとうございました‥‥」


二人で美味しいお寿司を食べてから
マンションに着くと、エレベーターを
待っている時にふと思い出した


『俺が偶然乗り合わせたから
 良かったが、過度な密着をされたら
 お客様でもハッキリ伝えるべきだ。
 何かあってからでは遅い‥‥。
 受付はそういったサービスを提供
 する業務じゃないからな?』


「はい‥‥滉一さん。」


『フッ‥‥いい子だ。』


海外の方といっても、ここは日本だ。
一度許してしまったら次もされかねない
から次回からは本当に気をつけよう。


秋冬の制服はパンツスーツだからまだ
露出は少ないものの、夏の制服時は
特に気を付けたい


エレベーターに乗り込み横を
見上げると、同じタイミングで
近づいて来た筒井さんが本当に
軽く唇に触れるだけのキスを落とした


「こ、ここ‥外ですよ?」


『密室だとこんなこともありえる。
 お客様との距離感もしっかり
 取るために真横に立たず、必ず
 相手に対して壁側に背を向けて立て。
 そうすれば少なくとも背後は守れる』


顔を赤くしながらも見上げると、
筒井さんに対してL字になるように
立たされた。


今‥油断してたのは相手が筒井さん
だからなんだけどな‥‥


『誰もいない時、自分の身を守るのも
 大切な役割だ。』


「はい、気をつけます。」


私は背丈が大きいものの、筒井さん
のように鍛えてて、体格が大きい
人なら簡単に押さえ付けられてしまう。


今までそんなことがなかっただけに、
改めて気付くことが出来た



金曜日の夜は、みんなで集まると、
スクリーンで映画を見ながら
筒井さん達はお酒を飲む為、私も
一杯だけ弱めのお酒を頂いて
一緒に見ることが多いのだ。


『おいで‥‥』


筒井さんが私を呼ぶこの『おいで』が
たまらなく好きで、素直にソファに
腰掛けると、私がプレゼントした
ブランケットをかけてくれた