玉響の一花    三

『はいそこ!!敷地内では
 イチャイチャ禁止!昨日の夜は
 大目に見てやったからな!?』


ギクッ


『は?こんなのいちゃいちゃに
 入るかよ‥煩いからもう行くわ‥
 また後で。』


蓮見さんとまたギャーギャー言いながら
坂を下って行くのを古平さんと
呆れながら見送ると、私達も
ゆっくりとスタートした。



本当に風が気持ち良くて最高に楽しい
サイクリングは、もう自分に欠かせない
好きな事の一つになっている


木々が生い茂る森のトンネルを
くぐりながら、車一台通らない坂を
下っていくだけで、リフレッシュ感が
半端ない


これが出来るだけでも来る価値が
あるのが分かるから、蓮見さん達が
毎回やるのにも納得できる


都内でこんな風に走ることは
絶対出来ないからこそ、この
貴重な時間を思いっきり堪能して
帰りたい‥‥


今日はいつものコースを走り体を慣らしてから、明日は森の中にあるランチが
出来る場所まで遠出するロングコースを
走る予定らしいからそれも楽しみだ


『はぁ‥‥今日の風は格別に
 気持ちいいね。ツラクない?』


「はい!楽し過ぎて嬉しいです。」



湖まで下ったあと一旦休憩をはさみ、
古平さんと写真を撮ったりして、
そこからまたぐるっと一周景色を
楽しみながら走った。



最後はいつもの地獄の登り坂を
ゆっくり漕ぎ、別荘に辿り着いたあと、また芝生の上に2人で寝転んだ。


『はぁ‥太ももはち切れそう‥』

「ほんとですね‥プルプルしてます」



ウェアの上を脱ぎノースリーブの
インナー姿になると、風が肌に心地よく
触れて気持ち良くてこのままずっと
ここに寝ていたくなる


普段はかっちりした制服を着て
着飾って過ごしている分、
カジュアルな格好で過ごすことは
わたしには鎧を脱ぎ捨てたように
軽くて最高なのだ


元々スニーカーやラフな格好が
好きだけど、社会人になって
常に大人っぽさを意識してたから、
こういう素の時間でのびのびと
過ごせることがとても嬉しい


『さてと、帰ってくる前に簡単な
 昼食準備しますか。』


「ふふ‥そうですね。」


汗だくの身体をシャワーでリセット
してから着替えると、キッチンで
下ごしらえしたものを古平さんが
火おこししてくれてる場所に移動した


『おっ、帰ってきたんじゃない?
 どうせいつものを催促されるから、
 井崎さん悪いけど持って行って
 貰える?』


「はい、了解です。」