玉響の一花    三

「私‥‥社内広報を見た時に、
 迷わず行きたいって思えました。
 フランス語が話せるだけなので
 行ける確率は低いですが、もし
 行けたら、自分の自信にも繋がる
 かなって‥‥。それに筒井さんが
 見た景色を私も見たいです‥。」


肩を優しく抱かれ筒井さんに甘えて
もたれると、その手が私の髪を何度も
丁寧に梳いていく


あまりの気持ちよさにウトウトして
しまいそうになるけれど、
明日もお休みだからまだ寝たくなかった



『前にも話したが、お前といつか
 フランスに行くつもりでいるから、
 今回がダメでも落ち込むことは
 しないと約束して欲しい‥‥。
 お前のように同じ気持ちで、
 このチャンスに挑戦したい人は
 少なからず沢山いるはずだからな。』


「はい‥約束します。
 落ち込んだら、今みたいに
 抱き締めて欲しいです。
 泣くかもしれませんが、それで
 リセットしてまた頑張りますから」



『フッ‥朝まで優しく抱いてやる。』


筒井さんの指が私の顎を捉えると、
綺麗な顔が近付き唇が塞がれた


静かなリビングに響くリップ音に、
脳内が筒井さんでいっぱいになると、
そのまま耳元に唇が移動してそこを
甘噛みされてしまった



『‥‥もうお前をここから帰さなくても
 良いんだな‥。』


「ンッ‥‥筒井さ‥‥」


Tシャツの裾から滑り込んできた
手が私の背中をスーッとなぞると、
体が大きくハネて反応してしまう



『‥‥‥抱いていいか?』


背中を手でなぞりながらそんなことを
耳元で囁かれ、上手く答えることが
出来ない私は、筒井さんの背中に
しがみつき頬にキスを落とした


『可愛いヤツ‥‥そのまま首に
 つかまれ。持ち上げるぞ。』


鍛えてるだけあって、軽々と
私をそのまま持ち上げると、寝室に
向かいベッドに優しく降ろされた。



ルームライトを付けた筒井さんが、
着ていたTシャツを脱ぐと、私の
Tシャツの裾に手を入れてそのまま
優しく脱がしてくれる。


「ッ‥筒井さん」


『どうした?』


「私‥‥筒井さんと一緒に住むことが
 出来て‥‥本当に嬉しいです。
 こんな日が訪れるなんて、学生の
 時からと思うと奇跡みたいです。」


下着姿で言うことじゃないかもしれない
けれど、このまま眠ってしまったら、
言えないまま明日を迎えてしまうから、
どうしても今日伝えたかったのだ


目頭に込み上がる涙を堪えて、
筒井さんに笑顔を向けた


『フッ‥‥‥‥‥奇跡か‥‥‥
 こら‥‥嬉しいならもう泣くな‥‥』


お互い上半身裸の為、抱きしめられると
触れ合う素肌の温度に恥ずかしさと、
安心感でいっぱいになってゆく