『それじゃあ俺はコダが待ってるから
帰るよ。』
「えっ!?す、すみませんっ!
古平さんにも後でメールを
しておきます。」
『ハハッ‥いいよ、そんなの。
それよりもさ?スネてる滉一君と
話し合わないとねー?
それじゃ、お邪魔虫は帰りますよ。』
「蓮見さんありがとうございました。」
立ち上がってから手を振る蓮見さんを
玄関までお見送りした後、
ダイニングチェアに座ったままの
筒井さんの隣に腰掛けた。
「筒井さんごめんなさい‥‥。
先に相談するべきでした‥‥」
せっかくの同棲初日なのに、
私のせいでこんな雰囲気にさせて
しまって申し訳なくなる‥‥
膝の上に両手を置いて握り締めると、
その手を筒井さんが上から包み込む
ように握り締めてくれた
『怒ってないから顔を上げろ。』
筒井さん‥‥‥
ゆっくりと見上げたそこにあった
いつもの優しい顔に、泣くつもりは
なかったのに勝手に涙が溢れてしまい、
絶妙なタイミングで筒井さんがそれを
丁寧に拭ってゆく
『事情が分からなかったから、
戸惑っただけだ。立場上、海外の
話を真っ先にお前にしてやれなくて
むしろすまなかった‥‥。』
「大丈夫です‥‥ッ‥‥
これからは1番に相談します‥‥
だから‥‥痛っ!!筒井さん!!」
涙を殴ってくれていた手が私の鼻を
思いっきり摘むと、吹き出した後
声を出して嬉しそうに笑った
『顔が茹蛸みたいだぞ?』
えっ!?
チュッっと音を立てて唇にキスを
落とされると、恥ずかしさで顔が
赤くなった私を見てまた筒井さんが
笑ってくれた
「筒井さんは応募されるんですか?」
交代でゆっくりお風呂に入り、
ソファに腰掛けてビールを飲む筒井さん
の横に私も腰掛けた
人事的な事は教えてもらえないことは
分かってるけど、どうしても気になって
しまう
勿論仕事で行くのだから、選ばれるならオンとして行くつもりだけど、
視界のどこかに筒井さんがいるだけで、
きっと私は何倍も頑張れてしまうはず
『俺は行くつもりだよ。
お前には人選が終わってから
話すつもりだったけど、
フランス支社に居たことと、
土地勘に慣れてるから、社長から
既に同行を頼まれている。』
すごいな‥‥‥
人事で役職がついていて、セミナーや
企業説明会などにも足を運ぶ立場で
忙しいのに、社長直々にって‥‥



