玉響の一花    三

『可愛いでしょ?』


「か、可愛いって‥‥仕事中ですよ?」


筒井さんは絶対オンとオフを分ける
人だから、私の事を名前で呼ぶことは
今後も就業時間内にはないと思うし、
私自身もそれを望んではいない


いつも通りの日常に、私が入り込んで
しまうことで、筒井さんが積み上げて来たであろう信頼や実績の邪魔になる
ようなことはしたくないから。



蓮見さんは普段からあんな感じだから、
ちゃん付けがなくなっても、周りは
何とも思わないかもしれないけど、
古平さんだけは分かってるはずだから、
気持ちを色々察してしまうのだ


『悪い‥‥なにせ長年の片思いが
 実ったからオジサン浮かれてんの。
 ‥‥暫く許して?』


オジサンって‥‥まだ30歳なのに‥‥


蓮見さんの気持ちも分かるから、
私は笑顔で頷くとお辞儀をしてから
受付に戻った。


あの日蓮見さんのお家に帰った
古平さんとちゃんと話が出来たって
ことだよね‥‥


2人とも大好きな上司だからこそ、
沢山幸せになってほしいな‥‥


『井崎さんおかえり。
 さっきちょうど社内広報で
 面白いのが来てたから空いてる時間に
 良かったら見て?』


「分かりました。
 休憩ありがとうございます、
 お先でした。行ってらっしゃいませ」


社内広報か‥‥


時々見るようにはしてたけど、
佐藤さんが面白いって言うなんて
どんな記事だろう‥‥


来客予定をもう一度確認してから、
椅子に座るとパソコンの画面の社内広報
をクリックしてみた。



これかな‥‥‥
最新の記事が昨日付けで上がっていて
開くとそこに書かれていた内容に驚いた


1つは来年企業創立30年を迎える為、
社員旅行に行きたい場所アンケートがあり、北海道、沖縄、韓国など2泊で行けそうな場所が例としてピックアップ
されていた。


私が産まれる前からあるDUELが、
今や世界にも支店がある大きな企業に
なっていることにも改めて感動する


北海道に行ったことないから私は
そこにチェックを入れ、部署と名前を
メールで送った。


筒井さん達も忙しそうだけど、旅行
とか行けるのかまた聞いてみよう‥‥


そしてもう1つの記事をクリックすると
思わず声が出てしまいそうになり、
周りをキョロキョロしながら一旦
落ち着いて、もう一度内容を確認した



11月◯日から1週間
フランスとスイスにて
行われる我が社のショコラティエによる
新作お披露目パーティーがあり、
フランス語が話せる社員募集とのこと。


採用担当は‥‥筒井さんだ‥‥‥


だいぶ前から決まっていたことかも
しれないけど、どうしよう‥‥
正直に言えば挑戦してみたい‥‥‥