玉響の一花    三

隣に座る筒井さんをチラッと見上げると
筒井さんも私の方を見てくれ、スッと
息を吸い込むと、前を向いた


『今日お時間をこうして頂いたのは、
 霞さんと一緒に住むことに対しての
 お許しを霞さんのお母様に頂きに
 来たからです。』


筒井さん‥‥


自然に筒井さんと手が重なり合い、
テーブルの下で手を握っていた。


「お母さん‥私からもお願いします。
 沢山悩んだし、考えたけど、
 自分の気持ちに正直に生きたい。
 だから‥」


『いいんじゃない?』


へっ?


必死な私のお願いも途中で遮られ、
ニコニコ笑うお母さんに拍子抜けして
しまう。


『貴方たちが2人で決めたなら
 やってみたらいいじゃない。』


「お母さん‥‥」


『筒井さん、この子、真面目でしょ?
 夫を亡くしてから忙しくてね?
 我儘なんてほとんど聞いてあげれず
 育ってしまったんです。
 だから、あなたの側ではうんと
 我儘が言えるようにしてあげて
 貰えますか?』


お母さんの言葉に何故か目頭が熱くなる


違うよ‥‥
我儘なんて言わずに暮らせたほど、
いい家族でありお母さんだったからだ‥


お父さんが亡くなった時、
大学の費用が大変だったから夜勤を
増やしたことだって知ってる


我儘を言わずに過ごして来たのは、
私じゃなくお母さんの方でしょ?


『彼女の素直で優しいところを
 消さないよう大切にすると
 約束します。』


「お母さん‥‥ありがとう。」


私‥この家に産まれてきて良かった。
本当にそう思ってるよ‥‥



『泊まらなくて良かったのか?』


帰りにマスターの喫茶店に顔を出し、
2人で一緒に住むことを報告すると、
筒井さんが家まで送ってくれた。


「引っ越す前に一度ゆっくり帰って
 美味しいご飯を作ってあげに
 行って来ます。あの‥筒井さん‥‥」


『どうした?』


「その‥‥私も筒井さんのご家族に
 会いに行きたいです。」


交通事故で両親と妹さんが
亡くなっているということは知ってる。
それでも筒井さんが私のお母さんに
挨拶をしてくれたから、私も同じように
きちんと挨拶がしたかったのだ


断られたら仕方ないって思う。
筒井さんがいつかいいよって
言ってくださるまで待てるから‥‥。


『そんなこと言われたの初めてだな‥
 ‥‥‥いいよ‥一緒に行こう。』


筒井さん‥‥


煙草の煙を私にかからないように
吐き出すと、空いていたもう片方の手が
何度も優しく頭を撫でてくれた。