玉響の一花    三

『どうかしたか?顔が赤いが、
 暑さで体調悪いとかなら早めに』


「い、いえ!!違うんです‥‥。
 その‥筒井さんが素敵で‥‥‥」


助手席のドアをスマートに開けて
くれた筒井さんが、俯く私の顎を
捉えると、上を向かせた



『‥‥‥フッ。お前が緊張してたら
 俺はどうする。‥今日は頼むな。』


暑くて髪を纏めている為、
頭ではなく頬に軽く手が触れると、
綺麗な顔で優しく笑った。


お母さんには、お付き合いしてる
人がいるとはだいぶ前には伝えていた。


でもそれが直属ではないにしろ、
会社の上司とは今だに言えていない‥


筒井さんを見て反対なんて絶対
されないとは分かってるけれど、
親に恋人を紹介するのは照れ臭くて
恥ずかしいものだ


お父さんも生きていたら
筒井さんに会って欲しかったな‥‥



私のマンションから悲しいことに
すぐ着いてしまう距離にある実家近くの
コインパーキングに車を停めると、
差し出された手をそっと繋ぎ2人で歩いて向かった。



ピンポーン


ガチャ


『おかえり。筒井さんも暑い中
 来てくださってありがとう。』


いつもと変わらぬ服装で、オシャレを
することもない母が出迎えてくれ、
いつも通りの対応に何故かホッとした


『お忙しい中お時間を作って頂き
 ありがとうございます。
 お邪魔します。』


うちの玄関なのに、扉を押さえて
私を先に入れてくれるあたりが、
普段から当たり前にされている
自然な筒井さんなのだろう‥‥


『こっち来て座ってちょうだいね。
 霞はお手伝いして?』


「う、うん‥」


うちの狭い居間に筒井さんがいる‥‥


こんな光景を6年前に想像できた
だろうか‥‥


冷たい焙じ茶をグラスに注ぐと、
筒井さんが美しい正座をしたまま
母にお土産に持って来ていた和菓子を
取り出して渡していた。


『せっかくだから頂こうかしら。
 霞、準備してくれる?』


お茶をテーブルの上に置くと、
渡されたお菓子を台所で取り出して、
取り皿に並べて持って行った。


『ようやく紹介して貰えて嬉しいわ。
 初めまして、霞の母の衣依です。
 いつも娘がお世話になっています。』


『いえ‥こちらこそ、ご挨拶が
 遅くなり申し訳ありません。
 娘さんとお付き合いさせて頂いて
 います筒井 滉一です。』


なんか‥‥私の方がこの光景に
多分1番緊張してる気がする‥‥


うちの母は看護師をやっているだけあり
精神面でもとても逞しく強いけど、
曲がったことが嫌いで性格は
サバサバしている方だ


私が料理が好きになったのは、
不器用なお母さんのおかげかもしれない


『それで?2人揃って来るなんて
 どうしたの?』


ドクン