玉響の一花    三

この場所から筒井さんに
行ってきますって言ったことなかった‥


恥ずかしいような、照れくさいような
何とも言えない気持ちに少しだけ
胸が締め付けられていく


オリヴィアさんと電車に乗ると、
日本の電車に興味津々で、終始
ニコニコで嬉しそうだった。


普段仕事が終わると、筒井さんや
蓮見さんとご飯を食べたりしていた
みたいだから車ばっかりだったみたい


「Souhaitez-vous continuer votre route jusqu'à la gare de Tokyo en train ? Le bâtiment de la gare est également très joli. Lumière pendant une visite
Prenons un brunch.」
(このまま東京駅まで電車で行きませんか?観光しながらゆっくりして軽めの
ブランチでもしましょう。)


たどたどしいフランス語をゆっくり
話すと、親指を立ててグッドの
ポーズをしてくれた彼女が笑ってくれた


それから東京駅の建物を見たり、
ブラブラと街中を歩いた後、
オリヴィアが入りたいと言った
カフェに一緒に入った。


「N'es-tu pas fatigué ?」
(疲れてないですか?)


冷たいアイスコーヒーに、
ベーグルサンドを注文した彼女に、
心配で尋ねてみた。


殆ど話したこともない相手と、
こんなふうに過ごして、私なら緊張して
疲れてしまうと思うから。


ここに筒井さんがいたら、きっと
甘えてしまうけど、敢えて1人で
行かせてくれたことに今は感謝したい


『C'est bon. Je suis vraiment heureuse parce que je ne peux pas venir dans des endroits comme celui-ci si je suis toujours avec mon mari.』
(平気よ。夫とずっと一緒だと、
 こんな場所に来られないから、とても
 嬉しいわ。)


「La France a des bâtiments et des cafés magnifiques, alors j'aimerais y aller un jour.」
(私もいつかフランスに行って、
 素敵なカフェや建物を見たいです。)


行ったことのない国というのは、
魅力的でもあるけど、何より筒井さんが
過ごした街をこの目で見てみたいのだ。