玉響の一花    三

 


『‥‥‥‥おはよう。』


気怠さが残る体に、まだ眠くて
ぼーっとする頭で身動きすると、
触れた肌の感触にそっと瞳を開けた



「‥‥おはよう‥ございます。
 もう起きられてたんですか?」


部屋は遮光カーテンの隙間から
入り込む陽の光で朝だということは
なんとなくわかった。


夏は陽が昇るのも早いからか
いつもはもっと早起きが出来るのに、
今日は気怠い疲労感が襲い、
とても起きられそうにない


優しかったけど、何度も
体の向きを変えてはその都度愛され、
その度に軽く意識を飛ばし、
長時間ゆっくりと体を重ねたのだ



お風呂に連れて行って貰ったことは
覚えているけど、そこから多分すぐ
寝落ちしてしまったんだと思う。



『ツラいか?』


優しく頭や頬を撫でる手に、また
眠気が襲ってくるほど心地よく
瞳が閉じそうになりながらも、
首を小さく横に振った


『それならいいが‥お前‥昨日はかなり
 乱れていたからな‥‥」


「ツッ‥‥言わないでください‥‥」


『フッ‥‥素直で可愛かったから
 いいだろ?それとももう一度
 今から見せてくれるか?』


「なっ!‥‥む、無理です!」


クスクスと笑う筒井さんが私を
引き寄せ腕の中に閉じ込めると
ギュッと抱きしめてくれた



あんな姿は‥‥相手が筒井さんだから
あんなことにもなってしまうのに‥‥
毎回余裕がなくて申し訳ない‥‥


体力だって運動してる方なのに、
やっぱり全然敵わない‥‥


あれから二度寝をしてしまい、
10時ごろまで爆睡してから、
掃除と洗濯をして筒井さんと一緒に
お昼ご飯を作って食べた



「筒井さんのフランス語は独学
 ですか?」


筒井さんと帰る前に、マスターの
喫茶店にタクシーで向かうと、
カウンターで美味しい珈琲を飲みながら
聞いてみることにした。


私は大学で4年間フランス語を選択して
英語と並行して覚えてきたけど、
私よりもはるかに発音が綺麗だし、
理解力もかなり高い気がする



『大学の時に元輝とフランス語検定を
 受け始めて、卒業する頃には
 3級まで2人で合格して、あとは
 社会人になってから講習を受けながら
 2級までとりあえず試験を受けて
 合格はした。お前も確か履歴書に
 書いてなかったか?』


「はい、私も在学中に3級までは
 なんとか合格出来ました。
 でもやっぱり早いフランス語は、
 聞き取るのが難しいなって‥」



やっぱり筒井さんはすごいな‥‥
改めて尊敬してしまう。