玉響の一花    三

仕事モードの筒井さんは仕事中は、
拓巳とは呼ばず、いつものふざけた
感じは絶対見せない。


笑顔も見せてくれるけど、
口角をあげるくらいで、どの人にも
変わらず落ち着いた大人の対応を
常にされている



『では井崎さんもすみませんが
 よろしくお願いします。』


佐藤さんと2人でお辞儀をして
筒井さんを見送ると、心の中では
なかなか社内で話せない喜びの気持ちと、冷静にならないという気持ちが
入り混じる



今日もなんて素敵なんだろう‥‥


夏が近いから、ジャケットを脱いでいた
シャツから覗く程よく鍛えられた
腕にさえ目のやり場に困るほどだ



『筒井さんって本当に素敵よね。
 声のトーンも落ち着いてるし、
 安心感が半端ないのにあの容姿だから
 社内の女子がとろけるのも分かるわ。
 井崎さんはよく落ち着いて応対できる
 わね?』


「えっ!?‥‥そ、そうですか?
 これでも結構緊張してるんですよ?」



オフの筒井さんを知ってるからこそ、
仕事モードの真面目な筒井さんと
話すのはやっぱり緊張する


入社した時の面談も、ほんとに
心臓がドキドキしてたから‥‥


『フランス支社の佐野主任と、
 もう1人お連れ様が見えるそうよ?
 日本人じゃなかったら、井崎さん
 応対頼むかもしれないから
 よろしくね?』


「はい、勿論です。」


佐野さんだけじゃないんだ‥‥。


そうだよね‥‥。出張も兼ねての
帰国だし、数人で来てもおかしくない


大きく深呼吸をして、背筋を伸ばし
1日の業務がスタートすると、
エントランスに停車したタクシーから
降りて来た男性に思わず口が開いた


この人‥‥元輝さんだ‥‥

写真で見た通りの人に思わず笑みが
溢れそうになるものの、佐藤さんと
姿勢を整えて準備をした。


背も高くがたいが良く、ラグビーでも
やってそうなほど逞しい男性は、
すぐに元輝さんなはず。


まだ10時40分だから筒井さん達も
流石に降りてきていないから、
応対だけしたらすぐに内線入れよう‥



「こんにちは。いらっしゃいませ。
 受付担当の井崎がお伺い致します。」


『Tu es la personne qu'il aime. Je suis très heureux de vous rencontrer. Puis-je te serrer dans mes bras ?』


えっ?


カウンター越しに思いっきり
抱きつかれると、驚いた佐藤さんが
思わず声をあげてしまった。


『おい!元輝!!』


ベリっと私から男性が引き剥がされると
筒井さんが元輝さんを思いっきり
睨んでいた



『ハハッ!!滉一、久しぶりだな!!
 お前に会えて嬉しいぞ。
 ほら、ハグさせてくれ!!』