玉響の一花    三

「お待たせしました‥」


スマホを構いながら煙草を吸っていた
筒井さんに急いで駆け寄ると、
ふぅーっと白い息を吐き出した後
嬉しそうに私を見て笑った


「な、なんです?‥おかしいですか?」



『フッ‥‥着替えたのか?』


「‥‥‥着替えました。」


首筋をスッと撫でられると、
煙草の火を消し助手席のドアを開け
乗せてくれた


わざとだ‥‥
筒井さんはきっと着替えるって分かってやったんだと思う‥‥


誰も私のことなんて見ないから、
どんな服を着てっても大丈夫なのに‥‥


筒井さんみたいに背も高くて、
顔立ちも綺麗なら分からなくもないけど
学生の頃なんて目立つこともなく
終わったんだけどな。


車が動き始め、私服姿の筒井さんに
ドキドキしながらもお店の前まで
送ってもらうと、何故か車から
筒井さんも降りて助手席のドアを
開けてくれた。


「ありがとうございます。」


『‥‥久しぶりだからみんなと
 楽しんでおいで?遅くなっても
 迎えにくるから連絡しろ、いいな?』


「はい‥」


なんだか離れ難い気分になるくらい
優しい目で見つめられ、恥ずかしさに
耐えられず俯くと、頭を優しく
撫でられた



『あれ?‥‥もしかして霞?』


えっ?


久しぶりだけど、なんとなく聞き覚えの
ある声に振り返ると、そこにいたのは
懐かしい同期のみんなで、私と隣に立つ筒井さんを交互に見られると筒井さんが
品よく軽いお辞儀をした


『それじゃあまた後で‥
 いいか?飲み過ぎるなよ?』


「えっ?あ‥はい。気をつけます。」


運転席に乗り込み軽く手を挙げて
走り去る筒井さんに手を振り見送ると、
後ろにいた同期達に一斉に取り囲まれた


『霞!!い、今の‥恋人だよね!?』


目をキラキラさせて話す小柄な彼女は、
毎年GWや年末に顔を合わせている
小松 葩(はな)だ


本が大好きで、今は念願の出版社に
勤めて、エッセイや詩集を担当している


『霞‥綺麗になったけど、今の彼は
 パーフェクト過ぎて言葉を失ったよ』


私と同じく背が高くサバサバとした
性格の杉崎 真衣(まい)も
サークルで仲良くなった1人だ


彼女は商社に入社して今は広報課に
勤めている為、出張も多くなかなか
会えないから久しぶりで嬉しい


「あ、ありがとう‥その‥私には
 勿体無いくらいの人だけど、
 大事にしてもらってます。」


『見れば分かるし!!
 中で沢山話聞かせてよね。』


葩と真衣に両腕を組まれると、
後ろにいたもう1人の懐かしい同期と
目が合った


「‥‥‥優くん‥久しぶりだね。」