玉響の一花    三


あの日から引っ越しのことを
考えない日なんてない‥‥


『お前の親にも挨拶に行かないとな。』


「えっ!?そ‥そんな大丈夫ですよ?
 筒井さんはお忙しいですし‥ッ」


『住所が変わるのに挨拶しないわけに
 いかないだろう?そういうことは
 ちゃんとさせて欲しい。』


筒井さん‥‥‥


真剣に私なんかとの生活を考えて
くださってることも嬉しいけど、
やっぱりきちんとされるところは
見習いたいと思ってしまう


「あの‥‥月末に大学のサークルの
 OBで集まる日があるんです。
 それと元輝さんのフランスへの
 帰国が落ち着いたら‥‥その
 筒井さんと一緒に住みたいです。」


『フッ‥‥分かったよ。
 サークルで集まる日は送り迎え
 するから連絡しろ。』


えっ?


車の外で煙草を吸いながら
私の方を横目で見た筒井さんが
空いている方の手で私の手を握った



「わ‥私1人で行けますよ?
 会社から近い場所でしたし、
 電車ですぐですから。」


ちょうど集まりがあるお店を調べたら
会社がある場所の近くだったのだ


大学もここから電車で30分圏内だし、
みんなが集まりやすいのがこの辺
だったのだと思う。


『夜なら尚更だろ?‥気にするな。
 俺がしたいだけだ‥‥。』


「‥‥はい、ありがとうございます。」


握られた手の薬指にはめられた
指輪をさすられると、筒井さんと
目が合い優しく笑ってくれた。



それから忙しい日々を過ごしながらも
あっという間に迎えたサークルのOB会
当日

朝から片付けや掃除をしてから
お弁当の常備菜を作り終え
シャワーを浴びていた


まだ筒井さんが来るまで2時間は
あるからゆっくり準備をして
支度を整えることにしたのだ


なんか‥‥サークルの集まりの
為じゃなく、筒井さんに会えるから
オシャレをしてる気がする‥‥


学生の時なんて、Tシャツにパンツ、
スニーカーにバックパックスタイルで
女性らしさなんて微塵も出せてなかったのに随分変わったなと思う


筒井さんはそのままでいいって言って
くださるけど、やっぱり自信を持ち
続けたいから、誕生日な時のように
自分磨きはしたいのだ


ピンポーン


えっ?


筒井さんが来るのにはまだ早いのに
鳴ったインターホンに、慌てて
ドアモニターの画面を見つめると、
筒井さんが立っていて驚いた


「今開けます!」


ロックを開けると、まだ部屋着のまま
で髪の毛もボサボサで今更ながら焦って
しまった


ガチャ


「‥‥こ、こんにちは。」