玉響の一花    三

保留にしてから、内線で人事に
電話をかけようとしたら、ちょうど
エントランスに降りてきた筒井さんと
蓮見さんを見つけ受話器を切った。


「筒井さん!あの‥お電話です。」



本当に偶然で驚いたけど、私の
声に気付くと2人がフロントまで
来てくれた。



『お疲れ様。誰から?』


「あ、あの‥フランス語で話されて
 いて佐野さんという男性の方です。」


『‥‥は?佐野?』


えっ?


蓮見さんと2人で顔を見合わせると、
筒井さんはすぐに外線の受話器を取った


『お電話変わりました、筒井です。』


えっ?
フランス語で話さなくていいの?


ポカンと呆気に取られている私に
蓮見さんが横から頬を指で突いてくる。


『霞ちゃん試されたんじゃない?
 佐野ってさ‥元輝だよ。』


「もとき‥‥?あっ!それって‥」


大きな声を出してからしまったと
反省して口元を手で塞いだ。


元輝さんって‥フランスにいる
筒井さんが昔からお世話になった人だ‥


もしかしてまた筒井さんをフランスに
呼び戻すの?と急に不安になってしまう


『霞ちゃん今日さ、ご飯行こうよ。
 亮も来るからさ。』


「えっ?行きたいです。
 すぐに着替えてきますね。」


電話で話す筒井さんのことも
気になったけど、先に着替えてから
戻ると、ちょうど電話が終わった
ところだったので、そのままパソコンの電源を落としてから、3人でいつもの
イタリアンレストランに向かった。



『元輝なんだって?』


『ん?ああ‥‥いきなり会社に
 かけてくるから仕事で何かあったかと
 思ったら、6月に久しぶりに仕事で
 本社に来ることになったから
 帰国する間は俺の家に泊めて
 欲しいってさ。スマホにかかれば
 いいものを‥‥』


『おっ!いいね!!
 俺も亮も顔出すから飯よろしく。』


『拓巳もたまには何か作れよ‥‥。
 井崎さんは元輝に会うの
 初めてだよね?』



乾杯をいつも通りしてから、
気になっていた電話の相手の元輝さんの
話題に興味津々になってしまう


「はい、初めてです。」


『チャーミングなヤツだから、
 きっと楽しいと思うよ。拓巳が
 3歳児なら元輝は5歳児かな。』


ええっ!?


『フッ‥‥佐野なんて名乗って
 おきながらわざわざフランス語で
 話しかけられただろ?
 お前のことは素直で真面目だと
 伝えてあったから揶揄われたんだよ。
 いまだに気付いてないだろ?』


そんな‥‥‥
お客様だと思ったからそこまで
頭が回らなかったし‥‥