玉響の一花    三

ぼーっと見つめていたせいで、
グイッと肘を掴まれてから入った
ショップは入ってから気付いたけど、
有名なファッションブランドのお店で、
入って見たかったけどなかなか
1人では入れなかったお店でもある。


『いらっしゃいませ。』


『こんにちは。すみませんが、
 彼女をコーディネートして
 頂けますか?』


えっ!?


普通に真顔で店員さんにそう話す
筒井さんに驚いて、今度は私が
思いっきり肘を掴んでしまった


「つ、筒井さん?」


『フッ‥‥。心配いらないから。』


そう言って私の頭を優しく
撫でてくれると、ニコっと笑った。


『少し用事で外に出ますので、
 30分程したらまた来ます。』


『かしこまりました。』


「えっ?ちょっと‥筒井さん!?」


軽く手をあげてから本当にお店を
出て行ってしまい、私はというと、
目の前の店員さんにニコっとされたので、苦笑いしながら笑顔を返した


『素敵なお連れ様ですね。』


「あっ‥‥そ、そうなんです。
 素敵過ぎて隣に立つのも勇気が
 いるような方なんです‥」


『では素敵にスタイリングしないと
 いけませんね。』


えっ?


『さっ、時間がないので
 戻られる前に選びましょう。
 せっかくお会いできたので、
 この時間を楽しみませんか?』


オシャレで綺麗な店員さんに
笑顔でそう言われたので、諦めて
私も笑顔でそう頷いた。


私の好みも聞いてくれながら、
体型などを考えて選んでいき、
服だけでなく、靴や鞄なども選び
トータルコーディネートを
楽しませていただきながら2人で
過ごしていた。


『お客様、如何ですか?』


「あっ‥背中のファスナーがあと少し
 なんですが‥届かなくて‥‥」


思っていたよりも硬いファスナーが
上手く上がらない‥‥
下手にやって壊してしまったら、
怖いから力を入れるのを躊躇う‥


シャッ


「あっ、すみません‥っ!!」


フィッティングのカーテンが
開いたかと思えば、鏡越しに
筒井さんがそこに立っていて、
一気に真っ赤になった私を見て
クスクスと笑っていた。


『貸してごらん‥やってあげるから』


嘘‥‥本気で?
すぐそこに店員さんもいるのに、
筒井さんがまさかこんな大胆なことを
するとは思わなかった‥‥


「ッ‥ありがとうございます‥‥」


『‥‥似合ってる‥綺麗だよ‥。』


ドクン


後ろから軽く腰を抱かれ、耳元でそう
囁くと、何事もなかったかのように
フィッティングから出て行ってしまった


綺麗って‥‥‥
どうしよう‥‥顔の赤みが増すばかりで
このままだとここから出られない‥‥


鏡にうつる自分が着ているシンプルな
黒のワンピースは
胸元や鎖骨が綺麗に見えて、
腰から下はゆったりしたシルエット
なのにとても体の線が美しく見える


シンプルなのにすごく素敵‥‥


黒ってなかなか着なかったけど、
これからは少し買い物の際には
見てみようかと思えた