玉響の一花    三

「嬉しいです。私、腕時計って一度も
 つけたことないので初めてを自分で
 作れるなんて楽しみです。」


『今はスマホとかあるから、なかなか
 身につけなかったりするけど、
 時計を見る習慣も大切よね。』


古平さんと、ワクワクしながら
隣同士で座ると、長机の反対側に
筒井さん達が座った。


別荘でのんびりしたり、運動したりも
勿論楽しいけど、こういった知らない
世界を体験できるのも嬉しい‥‥


ここに来なかったら、
きっと知らないまま過ごしていた
世界だと思うから。


『基本的な内部のパーツは同じなので、
 皆さんにはベルトの部分と文字盤を
 まずは選んで頂けますか?』


渡された見本を見ると、
ベルトの部分を金属タイプのコマと呼ばれるものを繋げるものや、皮、ラバー、ナイロンなど様々なものが載っている。


特徴やメリット、デメリットなどの
記載も読んでいると、筒井さん達は
やはりメンズなので金属タイプにする
と早々に決めてしまい文字盤を選び
始めていた。


仕事でも使えそうなものだとやっぱり
メタルブレスかレザーかな‥‥


頭の中で制服を思い浮かべ、色味を
考えた後、私も文字盤を選ぶことにした


数字もよく見慣れている算数などで
用いられるものがアラビア数字で、
アンティークによく用いられるのが
ローマン数字、あとはバーで数字を
入れないタイプもある。


難しいけど、大人っぽくローマンに
してみようかな‥‥


『決まりましたら、こちらの用紙に
 品番を記入してください。
 すぐにご用意しますので、その間に
 パーツを組み立ていきましょう。』


みんなのも気になるけど、
出来上がりまで楽しみが出来た。


ピンセットを使いながら、本当に小さな
パーツを間違えないように順番に
組み立てていき、細かい作業をしたことがないけど、楽しくも、神経を使って
慎重に作っていった。


職人の方がチェックしてくださり、
文字盤、秒針など自分が選んだ物を
被せ、最後にベルトをつけてようやく
全員完成した


「‥‥‥‥出来た」


途中難しいところもあったけど、
キーケース同様、自分で作ったものには
物凄く愛着が沸く


『みんなで腕につけて写真撮ろうぜ』


男性陣の時計はスーツにでも
合わせやすいシルバーの時計で、
みんなそれぞれ文字盤の色や針の
形も違うためどれも素敵だ。


古平さんと私は形こそラウンドの
物だけど、小さめでさりげない
腕時計にしてみた。


みんなで同じものを作って、
同じ日から動き出した時計って
なんか大人になってもすごく素敵だ‥‥