玉響の一花    三

初めての場所で筒井さんとこうして
過ごせる時間が大切で、どんな事でも
忘れずにいたいとさえ思える。


2人で軽めに食事を済ませ、
ラウンジでのんびりと出国時間まで過ごした後、搭乗口に移動し、訪れた
ビジネスクラスの広い座席に
圧倒されてしまった


「‥‥すごい‥ですね‥‥
 なんか‥落ち着かないです。」


筒井さんと隣同士なものの、
一列に6席のみの広々とした座席に
座ると、シートも柔らかくてかなり
リラックスして過ごせそうだ


『ここから長いフライトになるから
 リラックスしてればいい。
 向こうに着いたら1日目は時差で
 ツラいから寝れる時に寝ろよ?』


興奮冷めやらない私の頭をクシャっと
撫でると、靴を履き替えて慣れない
シートに座り、離陸までソワソワして
しまっていた


『失礼致します。お飲み物はいかが
 なさいますか?』


離陸して暫くすると、CAさんが
筒井さんにドリンクメニューを
差し出して少し眺めると、すぐに
それを閉じてしまった。


『シャンパンを彼女のと2つグラスで
 お願いします。』


えっ!?


『かしこまりました。
 少々お待ちくださいませ。』


「つ、筒井さん、私も飲んで
 いいんですか?」


いつもなら飲むなと言われるのに、
家ならまだしも、空の上で酔わないか
心配になる


『フッ‥‥一杯くらい付き合え。
 少し酔った方がお前はきっと
 眠れると思うから。』


仕切りの向こうから伸びて来た指が
頬をかすめ、そこが赤くなるのをみて
小さくクスッと笑った



周りに迷惑にならないくらいの
小さな音でグラスを合わせると、
美味しすぎるシャンパンに目が見開く


行く前からこんなに幸せを感じて
いいのかとも思いつつ、着いたら
気を張り詰めて仕事をしないと
いけないから、今だけは筒井さんと
このゆったりとした時間を過ごしたい


美味しすぎる和食の料理を食べてから
映画などを見て過ごしていると、
筒井さんはやっぱり食べ足りないようで
カツサンドだけでは終わらず、その後も
お酒を飲みながらお摘みを摘んでいた


引き締まった体のどこにそれが
吸収されているのだろうと不思議に思う


ジムに通ったり普段から走り込みを
しているから太らないように気をつけて
るとは言っていたけど、それでも食事
量の方が勝ってる気がする


温かいハーブティーをもらったあと、
軽くスキンケアと歯磨きを済ませ
席に戻ると、温かい毛布が用意され
席がフルフラットに倒されていた。