玉響の一花    三

程よく鍛えられた逞しい背中に手を回し
そこを撫でると、肌と肌が触れ合って
気持ち良さが増していく‥‥



『‥‥お前‥‥なんで泣いて‥‥』


「ッ‥‥すいません‥‥‥ただ
 フランスで1年ツラい時や、寂しい
 時に隣に滉一さんはいないんだなって
 ‥‥‥。まだ先のことだし、自分で
 決めたのに‥‥この腕の中が
 温かくて‥‥胸が苦しいです。」


以前筒井さんを日本で待っていた時は、
住み慣れた家、通い慣れた会社、
話せる友人、家族がいる環境だった。


でもフランスには知り合いもいない。
それに助けて欲しい時にも自分で
立ち上がらないといけない


夜眠る時もこの温もりがきっと
恋しくなると思う‥‥


『いいか‥‥?長い人生の僅か1年だ。
 あとの何十年はお前のそばにいる。
 助けて欲しかったら周りに声を出せ。
 それでも足りなければそっちに
 駆けつける。俺にはそれが出来る
 から何も怖くはないだろ?』


筒井さんの手に自分の手を重ねて
擦り寄り頷くと、私を見つめる瞳が
優しくなり、もう一度深いキスに
何度も溺れていった。


「ハァ‥‥ンンッ‥‥アッ!!」


体中に落とされる甘い痺れや
抑えたくても抑えられない甘い声に
筒井さんが一つひとつ答えてくれながら、優しくゆっくりと愛された。



『‥‥‥眠いだろう?
 少し無理をさせたな‥‥‥。』


お風呂に入り簡単にご飯を済ませ、
筒井さんの腕の中で微睡を感じていると、聞こえて来た声に耳を傾けた。


口を開きたいけど、愛された身体は
もう力が入らず、夢の中に入り
かけている。


『‥‥‥フッ‥‥子どもみたいな
 顔して‥‥おやすみ‥‥霞。』


筒井さんの声も届かないくらい
深い眠りにつき、10時近くまで
眠ってしまったにも関わらず、
二人で軽いランニングをし、ブランチを
食べてから出発の準備を進めていた


筒井さんに荷物が多いと言われてかなり
減らしたものの、大きめのスーツケースは既にパンパンで、結局手荷物の他に
小さいスーツケースをもう一つ持って
行く事に呆れていた。


『入りきらないならお土産は俺の方に
 入れればいい。帰りは圧縮すれば
 行きよりもスペースは出来るから。』


機内でラクな格好の方がいいと
筒井さんに勧められて締め付けの少ない
ニットのワンピースを着て、ふくらはぎまで隠れる温かいコートを羽織った。