玉響の一花    三

ああ‥‥‥
この人はやっぱり私よりも
ずっとずっと大人で、いつも私を
包み込んでくれている。


何も言わなくても筒井さんが言いたい事
がしっかりと伝わり、涙ぐむ私は
それを受け止めて小さく頷いた。


「行かせてください‥フランスに。
 自分自身でちゃんと前に進める人に
 なりたい。‥‥それを教えてくれた
 人に1年後変わった姿を1番に
 見せたいんです。
 社長‥‥よろしくお願い致します。」


座ったまま丁寧に頭を深く下げると、
隣に座る筒井さんが私の手を強く
握ってくれた


『よし、そうとなれば人事の筒井君に
 早速仕事をお願いしないとね。
 パーティーの件は変わらず2人に
 同行を願えるかな?わたしは再選考を
 するつもりはないよ。君が相応しいと
 選ばれたんだ。我が社は不正を
 働くような人はいないと信じてる
 からね。』


社長‥‥


筒井さんに手を握られたまま一緒に
立つと、社長のそばまで行き、
2人で改めて頭を下げてお礼を伝えた。


『社長‥‥メールの件は人事の方で
 すでに動かせていただいてます。
 わたしの私情でお忙しいにも関わらず
 ご迷惑をおかけしました。』


えっ?


『うむ、頼んだよ。
 2人とはフランスでまた会おう。』


『はい、それでは失礼致します。』


手を繋がれたまま慌てて私も頭を
下げると、筒井さんに手を引かれて
社長室を後にした。


メールの件はもしかして誰なのか
筒井さんは検討がついてるの?
人事で動いてるって‥‥どうして‥‥



ガチャ



「えっ?つ、筒井さん?」


非常階段の扉を勢いよく開けた筒井さん
が扉を閉めると私をすぐに力強く
抱き締めた。


「筒井さっ‥まだ仕事中です!」


『フッ‥‥そんなの知るか‥‥。
 今はお前を抱き締めたくてな。』


ドキン


冷静な筒井さんが社内にも関わらず、
誰に見られるかも分からない場所で
こんなことをするなんて‥‥


振り解かないといけないのに、
緊張や不安、色々な感情が混ざりあい
急に涙が溢れて来た


「ごめんなさ‥‥ッ」


『どうして謝る‥‥俺はさっきの
 お前を他の誰よりも誇りに思う。』


筒井さん‥‥


私なんかと付き合わなかったら、
こんな思いも迷惑もかけずに
いられたのに、それでも私の手を
離さないように握ってくれていた


『霞』


「はい‥」


『今度はお前の帰りをここで待つよ。
 だから‥帰って来たらお前と本当の
 家族になりたい。』


えっ?