玉響の一花    三

『辞退するということは、
 再選考をしても構わないと
 言うことかね?』


「‥‥正直‥悔しいですが、他にも
 行きたい方はいるということも
 知っています。ですので、一つ
 我儘を覚悟でお願いしたいのですが、
 自費で構いませんので、参加を
 させていただけたらと思います。
 挑戦したことを無意味にしたくは
 ありません。私は私の力で筒井さん
 と同じ場所に行き、尊敬する人の
 側で多くを学びここへ帰って来たい
 と思います。」


めちゃくちゃな事を、企業のトップに
言ってることは分かってる。


行かないのなら日本でいつも通り
働くべきだってことも。


もしかしたら、このままクビに
なるかもしれないけど、この気持ちを
言わずにこのまま筒井さんの隣で
座ったままは嫌だった‥‥。
この人の隣に立つと決めたのだから。


緊張して一気に話したからか、
今になって膝の上の手が震えてきた


『筒井君』


『はい』


『君の選んだ逞しいパートナーは
 唯一無二の存在だね‥‥。正直君が
 羨ましくなった。』


えっ?


隣に座る筒井さんを見上げると、
私の方を向き、口角をあげて笑うと
すぐに社長の方へ向き直った。


『わたしもそう思います。』


ポカンとする私を他所に2人が何故か
笑い合い呆気に取られていると、
筒井さんが私の手の上に自分の手を
重ねてくれた


『井崎君、君の思いは伝わったよ。
 君のような人にこそパーティーには
 相応しい。私からも我儘な提案して
 もいいかい?』


「は、はい‥勿論です。」


なんだろう‥‥
握り締めた手に力が入ってしまう


『では君にフランス支社へ
 1年間行ってもらいたい。』


えっ!?


あまりにも予想していなかったことに
驚き過ぎて言葉を失ってしまう。


私が‥‥フランス支社に?


『学びたいという君の強い気持ちに、
 私も背中を押したい。
 何かを得るのにたった2日の
 パーティーでは掴めないだろう?
 向こうで過ごしてまたここに戻って
 来た時はみんなが君を必ず認める。
 どうだろう?』


そんなこと急に言われても、
直ぐに返事が出来ない‥‥


でも社長の仰る事も
分からないわけではない。
私に何もできる事がない今、
経験という大きな引き出しを得れば、
きっと今後こんなことを言われても
俯かず前を向けるって‥‥


筒井さんの方を向くと、私を見つめ
何故か笑顔を見せてくれている。