玉響の一花    三

今までは作り置きで適当に済ませて
いた1人きりの食事も、誰かがいると
こんなにも考えたりするんだね‥‥


数年前の私からは想像も出来ないこの
生活にもほんの少しだけ慣れてきた
頃かもしれない‥。


ホームを見渡すと、世の中にこんなにも
たくさんの異性がいるのに、本当に
好きになる人って1人なのが不思議だ


私の場合は、落ち着いた大人の雰囲気
と笑顔に惹かれたところから始まった
けど、同じ企業に偶々就職して、
知らなかった筒井さんを知り、
内面もどんどん好きになっていった



「えっ?‥‥筒井さん‥」


電車を降りると、目の前のロータリーに
停まっていた車にもたれ煙草を吸う姿を
見つけるだけで安心して駆け寄ると、
そんな私に気づいた彼もまた笑顔で
私の頭を撫でてくれた。


「迎えに来てくれたんですね。
 ‥ありがとうございます。」


『フッ‥‥少し顔が赤いな。
 寒いから先に乗ってろ。』


私を助手席に乗せてくれると、
温かい車内から煙草を吸う姿を
眺めていると、通りすがる人達が
同じように筒井さんをチラチラ見ながら
歩いているのが視界に入る


カッコいいもんね‥‥ほんとに。
私だって初めて見た時に、同じような
気持ちになったのだから‥‥



あれ?
‥‥向こうからこっちに来た人って‥


ツッ!!い、飯田さん!?


外からは見えないようになっている
ものの、フロントから覗かれたら
どうしよう‥‥


ここの駅で降りたということは、
この辺りに住んでいるのだろうか?


やましいことをしている訳では
ないけれど、あんな事があった後に、
筒井さんと一緒のところを見られるのは
なんとなく避けたかった


‥‥‥何を話されてるんだろう


エンジン音で外の音があまり聞こえず
不安ばかりが募り、10分ほどしてから
飯田さんが去るまで身動きが取れず、
ただただ待つしかなかったのだ


ガチャ


『悪い‥‥待たせたな。』


「い、いえ‥‥」


すぐに車を発進させる筒井さんが
何も私に言ってこなかったので、
特に大丈夫だと思い私も聞くのを
辞めることにした。


偶々会っただけかもしれない‥‥
きっとそうだよね‥‥



『井崎さん、社長がお呼びです。』


えっ?


次の日会社にいつも通り出社した私は、
就業前に呼び出されるまで
何にも分かってなかった‥‥


コンコン