玉響の一花    三


『もう大丈夫なのね?』


次の週の月曜日、金田部長に
呼びだされた私が会議室に行くと、
そこに飯田さんがいて、先日私に
言ったことに対しての謝罪をしてくれた。


表情的には納得は出来てないようにも
感じてしまったけれど、筒井さんと
話して、ブレない気持ちで前を向くと
決めたので、再度敬意をはらって頭を
下げてから退室したのだ


「心配かけてごめん‥‥
 今日はお詫びに奢らせてね。」


一時はどうなるかと思った飯田さん
だけど、金田部長が間に入って
下さり直接的な話にはならずホッとした


『フランスに行くのはもう明後日
 からだね‥‥。緊張してる?』


「うん、いい緊張感はある。
 会場で、向こうの会社関係の方
 以外の人ともフランス語と英語を
 使ってコミュニケーションを
 取りたいし、企業のアニバーサリー
 に出られる機会はないと思うから、
 色々吸収して今後の自分の
 スキルアップにも繋げたいな‥。」


『ふふ‥なんか霞‥いい意味ですごく
 変わったね。』


えっ?


焼きたての焼き鳥を美味しそうに
食べた後、冷えたビールをゴクゴクと
流し込む男勝りな美女が嬉しそうに
笑っている。


入社してから変わったとしたら、
大部分は筒井さんの影響が大きいけど、
悲しい事、ツラい事、嬉しい事を
経験して来れたから、3年前より
少しは変われたのかもしれない。


『私も企画課でもう3年目なのに、
 なかなか案件が通らずボツに
 なる事も多くてへこむけど、まだまだ
 これからって思ってる。
 だから、違う場所に勇気を出して
 飛び込む姿には、かなり影響受ける。
 霞らしく頑張っておいで。』


「菖蒲‥‥ありがとう‥‥」


『あ、お土産と土産話をよろしくね。』


コツンとグラスを合わせてもう一度
乾杯をすると、菖蒲の優しさに
泣きそうになるのを堪えた


筒井さんに今から帰るとメールを
済ませると、駅で菖蒲が突然
ハグをしてくれ驚いた


『私、杉浦君の家にこのまま行くから
 筒井さんによろしくね。
 霞‥‥仕事と言えど楽しんで来て
 欲しい。分かった?』


「うん、ありがとう‥菖蒲」


お酒を飲んでいないのに火照る顔を
少し仰ぐと、ホームで電車が来るのを
待つ事にした。


筒井さんはまだお仕事かな‥‥。
帰ったら何かご飯を作ってあげよう‥‥

フランスに旅立つ前だから暫くは
和食で体を満たしたいだろうし、
スーパーに寄って帰ろうかな。