玉響の一花    三

そのまま地下駐車場まで降りていき、
車に乗せてくれるとハンカチで目元を
押さえて泣く私の背中を、信号で止まるたびに何度もさすってくれた


『‥‥着いたぞ。もう大丈夫だから
 ここにおいで‥‥』


車が停車したのと同時に、
シートベルトを外すと、思いっきり
筒井さんの腕の中に飛び込んだ。


甘えちゃいけないって分かってる‥‥。

自分が選ばれたことで、飯田さんの
ように思う人がいるということを
目の当たりにして、改めて浮かれていた
自分を恥じた。


「ッ‥‥すみません‥また巻き込んで
 しまって‥‥」


『上司として当然のことをしたまでだ。
 あれがお前でなくても同じことを
 したさ。まぁ‥‥見つけた時は
 また面倒ごとに巻き込まれてるとは
 思ったがな‥‥』


少し笑うかのように息を吐く筒井さん
が、私の頭や背中を撫でてくれ、
暫くその温かさに包まれていた



『落ち着いたか?』


いつのまにか運転席を少し倒して
私を抱き抱えていた筒井さんから
抜け出すと、泣き腫らしたであろう
私の顔に手を触れさせそこを撫でた



「筒井さん‥‥私フランスで沢山
 学んで必ずスキルアップします。
 この機会を無駄にしないように
 頑張ります。」


『‥‥その気持ちがあればいい。
 そのまっすぐな姿勢があれば、
 飯田をはじめ行けなかった者たちは
 いつか必ず認めてくれる。』


「はい‥‥ありがとうございます。
 筒井さんが居てくれて良かった‥」


もう泣きたくないのに、涙が溢れ
てしまった私の頬を撫で、起き上がった
筒井さんが私の唇を優しく塞いだ


受かる人、受からない人がどんな世界に
だってあると思う。


大人の世界だけではなく、子供の世界に
だって勝ち負けは沢山ある。
強くなくても、経験がなくても、
本人の努力次第で入れなかった世界に
足を踏み入れることだって可能な時代。

時間は有限だからこそ大切にしたい。



『フッ‥‥家に帰るぞ。
 お前のお腹の虫も騒いでるからな。』


「ツッ!!き、聞こえました!?」


『聞こえたぞ。でっかい音がな‥‥
 フッ‥‥やっぱりお前は泣くより
 食い気が似合ってるよ。』


「痛っ!!つ、筒井さん!!」


鼻を摘まむと大笑いした筒井さん
に、さっきまで大泣きしていたのにも
関わらず、私もつられて笑った。


いつも助けてくれる大切な人を、
私も沢山笑顔にしたい‥‥。
守ってもらうだけじゃなく、
私も守れる人になりたい‥‥
そう思えた。