玉響の一花    三

『私には分かりかねます‥。でも、
 企業が決めた事なら従います。
 きっと羨ましいとも思いますし、
 落ちたのであれば悔しくて私は
 きっと落ち込むかもしれません。
 部長と筒井さんが抜けられた人事は
 1週間とても大変だと思いますが、
 そのリスクがあっても選ばれたと
 いうことは必ずそれなりの理由が
 あると思いますので、そういう人に
 なれるように努力したいです。』


震える声でそう発すると、
3年前に一気に引き戻されそうになる


あの時は自身の部署さえ決められなかった私が、前を向いて話が出来ていた


成長できているかは分からないけど、
今なら筒井さんにあの頃とは違う
気持ちを伝えれる気がしたのだ



『ハハッ‥‥確かに私と筒井君が
 抜けたら人事課は大荒れだ。
 素直な回答をありがとう。
 飯田さん、あなたが井崎さんに
 された事は、一歩間違えば
 脅迫、中傷、あるいは
 人権侵害行為にも当たる。
 上が選ばれたら言わないのに、
 自分よりも弱い立場の下が選ばれた
 ら言うのはおかしいだろう?』


『そんな‥‥私はただ彼女より
 私の方が行く価値があると!』


『価値?人の価値を己の基準で
 選んでいる時点であなたが
 選ばれることはない。
 自分の欲を書いたものは落とされ、
 企業のスキルアップを書いたものが
 選ばれた‥‥それだけだ。
 納得がいかなければこの後聞こう。
 筒井君と井崎さんは帰宅して
 いいよ。』


『わかりました。‥お忙しいところを
 ありがとうございます。
 井崎さん、一緒に出よう。』


えっ?


立ち上がった筒井さんにそう言われ、
本当に帰っていいのか分からないで
いると、隣に座っていた飯田さんと
目が合った。


私なんかよりも何年も会社のために
働いて来た先輩‥‥。
選ばれていてもおかしくないキャリア
だからこそ悔しさと苛立つ気持ちが
沸くのは当然だと思う。



何も言えないからこそ、敬意をはらい
丁寧にお辞儀をすると、金田部長にも
頭を下げ筒井さんと退室をした。


既に最低限の照明しか付いていない
空間を2人で歩き、エレベーターが
到着しても何も話さないままでいると、
隣に立つ筒井さんがそっと手を
握ってくれた。


『よく頑張ったな‥‥』


筒井さん‥‥


たった一言そう言われただけなのに、
我慢していた涙腺が崩壊して、
一気に両頬に涙が流れていく