玉響の一花    三

「お待たせしました。」


『うん、ほんとね。
 これは就業後に久しぶりに
 飲みに連れて行かないとだわ。』


「ヴッ‥‥ほんとにごめん。」


思い出すだけでもまた赤面して
しまうと思うから、これ以上筒井さん
のことを今は頭から消さないと
マズイと思った


出会って何年も経つのに未だに、
付き合いたての学生のような反応は
ダメだとは思うのにどうしようもない


それは相手がやっぱり筒井さんだから
なので、私の中の何かが過剰に反応
している証拠だ



『菖蒲さんお願いですから、
 飲み過ぎないでくださいね。』


『大丈夫よ。もし危なさそうなら
 タクシーで帰るから。』


杉浦君‥ごめんなさい。貴重な
華金を菖蒲と過ごしてしまって。


二人はまだ付き合ってこそいないものの、距離感も雰囲気もどんどん変化
しているのは目に見えている。


『待ちます』と言ってくれたあの言葉が
か彼の誠実さを表しているのだ


菖蒲も彼の気持ちはもう分かってるとは思うけど、前の彼との恋愛期間も長かったし、すぐには付き合いますとは言えないんだと思う。


杉浦君の気持ちが真剣って
分かってるからこそ、いい加減な気持ち
で向き合いたくないって言ってたから。


『じゃあ終わったらエントランスに
 集合ね。』


「うん、わかった。」


午後の来客が多くバタバタしながらも、
合間に手紙を届けたりしながらと
あっという間に17時を迎え、やり残した仕事をぱぱっと終えてから着替え
エントランスで菖蒲を待つことにした


筒井さんにメールだけしておこう‥‥


今日はノー残業DAYだから筒井さんも
きっと早く帰れると思うし、偶には
ゆっくりして欲しいから


『あの‥‥受付の井崎さんよね?』


えっ?


見たことがない女性に声をかけられ
少し驚きつつも、社内にいるということは会社の人だと思うから、とりあえず
頭を下げて返事をした。


『私、名古屋支社から異動で来た
 飯田 香苗(いいだ かなえ)って
 いいます。』


名古屋支社‥‥
10月に毎年人事異動が行われて
いるのは知っていたけど、
総務課以外の社員の役職以外は
話したことがない分よく知らない


私よりも少し背丈が低く華奢な女性は、
鎖骨辺りの長さの髪を綺麗に巻いて、
メイクも派手すぎず綺麗にされている


話したこともない人が私に
何の用事だろう‥‥


「受付の井崎 霞です」