「陽奈ちゃん、今まで楽しかったね。私たちいつも恋バナとかしたよね。」

杏ちゃんの目には涙が浮かんでいた。


「陽奈ちゃん、こんな事言っちゃダメだけど…。いつでも帰っておいでね?ずっと、私たちの娘だって思ってるから。ね?」

「杏ちゃぁあん!」

私は杏ちゃんに飛びついた。

「陽奈、頑張れ。きっと幸せになれるから!」

杏ちゃんはこの時、初めて私を陽奈って呼んでくれた。


「陽奈ちゃん、行こっか。」

島崎さんが言った。

「じゃあね、杏ちゃん。」
「ぅん。またね陽奈ちゃん。」


またね。

…か。


また会えるよね…。

私は車へ乗りこんだ。


ブォーー。

車はその場から走り去った。





「陽奈あ!ありがとねえ!またねー!」


杏ちゃんの声が聞こえた。

だけど私は振り返らずにただ、私のこれから行く先だけを見つめていた。