名前のない香水

ベッドで目を閉じたまま、
どれくらい時間が経ったのかは、
正確には分からなかった。

気づけば、
体の重さが、少しだけ抜けている。

息を吸っても、
さっきみたいな苦しさはない。

腕に力を入れて、
上半身を起こす。

——大丈夫そう。

無理をしている感じも、
ない。

時計を見ると、
一時間ほど、経っていた。

その事実に、
少しだけ驚く。

外から聞こえてくる音は、
遠くて、ぼんやりしている。

今頃、
何をやっているんだろう。

グラウンドの様子が、
頭に浮かぶ。

保健室には、
誰もいなかった。

先生も、
きっとグラウンドに出ている。

静かな空間に、
一人きり。

一花は、
ゆっくり立ち上がった。

焦らなくていい。

今は、
ちゃんと歩ける。

廊下に出る前に、
一度だけ、深呼吸をする。

それから、
グラウンドへ向かって、
歩き出した。