名前のない香水

「あるでしょ、去年買ったやつ。」

「あるけど……今年着れるか分からなかったし。」

そう言いながら、
夢はクローゼットの奥から、
布で包まれた細長い包みを引っ張り出した。

「一花、去年ここに置いてったじゃん」
「あ……そうだった」

忘れていた、というより、
思い出さないようにしていたのかもしれない。

夢が包みをほどいて、
床の上にそっと広げる。

淡い白地に、
水色と薄紫の朝顔が、静かに咲いていた。

広げた瞬間、
夢が目を細める。

「やっぱこれ、一花っぽい」
「そうかな」
「うん。派手じゃないのに、ちゃんと目に残る」

夢はそう言って、
朝顔の花びらの縁を指でなぞった。

「うん、これでいいと思う」
「……うん」

鏡に映った自分は、
少しだけ、いつもより大人びて見えた。

似合っているかどうかより、
着たいと思えたことが、
今は嬉しかった。

夢は何も言わずに、
帯を横に置く。

「連絡、する?」