名前のない香水

検査結果を伝えたのは、夢の部屋だった。

エアコンの効いた小さな部屋で、
床に座って、背中を壁に預ける。
いつも通りの場所なのに、
今日は少しだけ、言葉を選んでしまう。

「入院は、今回はしなくていいって」

そう言った瞬間、
夢の表情が、ふっと緩んだ。

「……よかった」

その声が、
私よりも先に安心しているみたいで、
胸の奥が、じんわり熱くなる。

「無理はだめだけどね」
「分かってる」

何度も繰り返してきた会話。
それでも、こうして言い合えることが、
今はありがたかった。

夢は立ち上がって、
クローゼットの前に座る。

「でさ、浴衣どうする?」

急に空気が変わる。
さっきまで病院の話をしていたのが、
嘘みたいに。