名前のない香水

桐谷は、
シャワーの音にまぎれて、
小さく息を吐いた。

リビングに戻ると、
床に散らばったブロックの横で、
一番下の弟が振り返る。

「お兄ちゃん、今日なんか変だよ。」

何気ない声。
でも、少しだけ首をかしげている。

「……そうか?」

「うん。なんか、ぼーっとしてる」

それだけ言って、
弟はまたブロックに戻った。

桐谷は、
何も返さずキッチンに立つ。

――変、か。

自分でも、
否定できなかった。