名前のない香水

ベッドに横になると、
天井の白が、やけに眩しく感じた。

足元を見ないようにして、
ただ天井を見つめる。

――気づいて、ないよね。

そう思いたくて、
でも、さっきの腕の強さを思い出す。

保健室の先生が、
「少し休んでいこうね」と、穏やかに言った。

「……はい……」

それだけで、
言葉は、続かなかった。

桐谷くんは、
ベッドから少し離れたところに立っていた。

近すぎず、遠すぎず。
視線も、合わせない。

何も聞かれない。
何も、言われない。

それが、今はありがたかった。

けれど。

――この人、何か気づいてる。

確信じゃない。
でも、そんな気配があった。

「ありがと……もう、戻っていいから……」

思わず、そう言ってしまう。

迷惑をかけたくなかった。
これ以上、見られたくなかった。

桐谷くんは、一瞬だけ言葉に詰まった。

「……いや」

短く、それだけ。

理由は言わない。
でも、そこから動こうとはしなかった。

胸の奥が、
きゅっと締めつけられる。