名前のない香水

どちらからともなく歩み寄り、

俺たちはそっと、

あの日のように指先を触れ合わせた。

――暖かい。

二年前、

あんなに冷たかった一花の指先が、

今は俺と同じ、

確かな熱を帯びている。

その事実に、

俺の喉の奥が熱く焼けた。

彼女がどれほどの絶望を乗り越えて、

この体温を取り戻したのか。

病院の消毒液の匂いも、

処置室の冷たいタイルの感触も、

もうここにはない。

俺たちの間に、

気の利いた言葉なんて必要なかった。

二年間の空白を埋める「ごめん」も、

再会を祝う「おめでとう」も。

そんな薄っぺらな名前をつけてしまったら、

この震えるような想いが、

零れ落ちてしまいそうで。

俺はただ、

繋いだ手に少しだけ力を込める。

彼女も、

同じだけの強さで握り返してくれた。