名前のない香水

大学に入り、

新しい環境、

新しい人間関係に囲まれても。

俺のルーティンは、

ひとつも変わらなかった。

朝起きて、ベランダから空を見る。

講義の合間、

ふとした瞬間に、空を見る。

どこにいても、

何をしていても、

思考の終着点は、いつも一花だ。

彼女が今もどこかで、

名前も知らない薬や、

痛みを伴う治療と戦っている。

そう思うだけで、

弱音なんて、吐けるはずがなかった。

「……俺も、頑張らないとな」

周囲が新しい恋や遊びに興じる中で、

俺はただ、

自分を磨くことに没頭した。

彼女が戻ってきたとき、

胸を張って「待っていたよ」と言える自分でありたい。

彼女が選んだ「会わない時間」に、

恥じない自分でありたい。

——どれくらいの季節が過ぎただろう。

髪が少し伸び、

背丈も少し変わったかもしれない。

それでも。

胸の奥で、

静かに、

けれど確かに燃え続けるこの想いだけは——

あの日から、

一分一秒たりとも、

変わらないまま。