名前のない香水

「お兄ちゃん、最近どうしたの?」

夕食のあと。

妹が、何気なく言う。

「元気ないよ?」

桐谷は、箸を止める。

「そうかな、いつも通りだけど。」

それで済ませようとした。

でも、妹はじっと見る。

「バスケも、なんか変だよ。」

言い返せない。
自覚があるからこそ、言葉が詰まる。
少し迷ってから、テーブルの上にスマホを差し出した。

「……どう返せばいいか、分かんなくて」
「今まで俺が一方的に送って既読ついて終わりだったからさ。」

初めて、誰かに本音を言った。
妹は画面を見て、小さく笑う。「好きなんでしょ?」

あっさり言われて、桐谷は言葉を失う。