名前のない香水

あれから、一週間。

通知は鳴らないまま。

既読の表示だけが、
画面の奥で固まっている。

たった一言、返せなかっただけなのに。

一花は、どんな思いで返事をしてくれたんだろう。

いつもは俺が、空の写真や
どうでもいい一言を一方的に送っていただけだった。

桐谷は、スマホを伏せる。

体育館の音が、遠い。

「……っ」

放ったシュートが、またリングに嫌われて弾かれた。

「おい、凰雅。今日どうしたんだよ。お前らしくないぞ」

部員の声に、我に返る。

軽すぎただろうか。
重すぎただろうか。

何万回も繰り返してきたシュートのフォームは、体が覚えているのに。

画面に打ち込む、
たった数文字の正解が、どうしても見つからない。

一花は、今も待っているのか。

窓の外には、夕暮れ。

彼女が見ているのと同じかもしれない空が、
今はひどく遠く見えた。