入院。
しばらく会えない、どころじゃない。
もっと、先のことを考えてしまう。
怖い想像が頭をよぎる。
でも。
「……本人は、あまり周りに知られたくないみたいで」
母の声は、どこか申し訳なさそうだった。
「だから、お願い。
私から聞いたことは、一花には言わないで」
桐谷は顔を上げる。
「一花が、自分の口で話すまでは
そっと見守ってあげてほしいの」
守るような目だった。
娘を。
そして、桐谷の気持ちも。
「あなたのこと、大切に思っているからこそ……
言えないのかもしれない」
その言葉が、胸に刺さる。
大切だから、隠す。
守りたいから、距離を取る。
桐谷は、ゆっくりとうなずく。
喉がうまく動かない。
「……わかりました」
本当は今すぐ会って、
全部聞いて、
抱きしめたい。
でも。
それが一花の望みじゃないなら。
「俺、待ちます」
震える声で、それだけ言った。
母は少しだけ目を潤ませる。
「ありがとう」
そのとき。
診察室の扉が開く音がした。
桐谷の心臓が跳ねる。
白い廊下の奥から、
ゆっくりと歩いてくる影。
一花だ。
少しやつれた顔。
でも、桐谷を見ると――
驚いたように、目を見開く。
「……え?」
時間が止まる。
言えない。
何も知らないふりをしなきゃいけない。
でも、会えた。
会えたんだ。
桐谷は、ぎこちなく笑う。
「……偶然」
嘘が、こんなに苦しいなんて。
